逃走ルートは1本ではなく3本持つ
「逃げたつもりが、気づいたら行き止まりだった」。追われながら必死にルートを選んだのに、最後の曲がり角で絶望する経験には、非対称PvPをやっているうちに何度も出くわす。ここまでのSTEPで、マップを使い方として読む感覚と、視界線の引き方を扱ってきた。次に手を入れたいのは、ルート選びの癖そのものだ。このSTEPでは、「逃走ルートを1本しか持たずに動く」状態から抜け出すための考え方を整理していこう。
逃走ルートを1本しか持たない癖の正体
多くのプレイヤーは、追われる瞬間にルートを考え始める。追われてから考えるというのは、実はすでに手遅れになっていることが多い。追われる前に、自分が今いる場所から3本の逃走ルートを頭の中に置いておく、という習慣があるかないかで、追跡戦の初動がまるで変わってくる。
ただし、これは「常に3本のルートを意識し続けろ」という話ではない。意識し続けるのは負担が大きく、続かない。ここで狙いたいのは、「何もないときに1本だけ頭に置いておき、危険を感じた瞬間に2本目と3本目を足す」くらいの緩さだ。
3本のルートはどう数えるか
3本と言っても、実際にマップの上で完全に別の経路が3つあるとは限らない。ここで言う3本は、物理的な経路の数ではなく、判断の選択肢の数に近い。次の3つのタイプに分けて数えるのが扱いやすい。
- 第1ルート(直進) -- 今いる場所から最短で安全圏に向かう、素直なルート
- 第2ルート(分岐) -- 第1ルートの途中で、別の方向に逸れられる地点を持つルート
- 第3ルート(リセット) -- 一度後ろに戻るか、別のエリアに迂回するルート
この3つは、物理的に交差していても構わない。大事なのは、自分の頭の中で別の選択肢として立ち上がっているかどうかだ。選択肢として数えられていれば、それは3本として扱える。
第1ルート -- 直進の基本設計
第1ルートは、最も直感的に浮かびやすい選択肢だ。危険が発生した瞬間、頭の中に真っ先に浮かぶ「あっちに行けば安全」というイメージが、そのまま第1ルートになる。
ただ、第1ルートだけで動くと2つのリスクがある。1つは、相手も同じルートを予想しているリスク。もう1つは、そのルートの途中に予想していない遮蔽や視界線があったときに、対応できず立ち止まってしまうリスクだ。第1ルートは便利だけれど、それだけだと「読まれやすい行動」になってしまう。
第2ルート -- 分岐を持つという発想
第2ルートは、第1ルートの途中に「曲がれる場所」を一つだけ用意しておく設計だ。完全に別経路を覚える必要はない。第1ルートを歩きながら、「ここで右に曲がれば別のルートに入れる」と思える地点を1つだけ意識しておくだけでいい。
この発想は、前のSTEPで扱った視界線の知識と噛み合う。曲がれる場所を選ぶときに、「その曲がり角の先にある視界線がどうなっているか」を同時に考えると、分岐の質が一段上がる。逆に言えば、視界線の知識がないと、分岐の先に強い視界線が走っていて、曲がった瞬間に見つかる場面が増えてしまう。
分岐の選び方 -- 「どちらに曲がっても成立する」場所を選ぶ
分岐地点として選ぶべきなのは、自分がどちらに曲がっても一定の安全が確保できる場所だ。左に曲がれば安全だけれど右は袋小路、というような分岐は、選択肢ではなく強制の一択に近い。選択肢として意味を持つのは、どちらにも生存の可能性が残っている分岐だけだ。
マップを歩くときに「ここは分岐地点として使えるか」という目線を持っておくと、同じマップでも見え方が変わってくる。使い方の地図という発想がここでも生きてくる場面だ。
第3ルート -- 戻る、迂回する、リセットする
第3ルートは、直進でも分岐でもなく、一度流れを止めて別のエリアに移る判断にあたる。「戻る」「迂回する」「視界線を完全に切ってリセットする」のいずれかが第3ルートの中身になる。初心者のうちは「戻る」に抵抗を感じる人が多いけれど、追跡戦の文脈では有効な選択肢だ。第3ルートは第1・第2ルートで成立しないと感じた瞬間の保険として機能し、保険がある状態で動くのと、保険なしで動くのとでは、前半のルート選択の落ち着き方がまるで違ってくる。
3本のルートを試合中にどう保持するか
3本を頭の中に常に並べるのは大変に感じるかもしれない。最初からうまくはいかないので、段階的に導入していくのが現実的だ。まずは自分が普段何本のルートで動いているかを観察するところから始め、次に試合後の振り返りで「あの場面の2本目はどれだっただろう」と考える習慣を作る。振り返りが習慣化してきたら、実戦中にも2本目を用意する余裕が生まれ、やがて3本目のリセットルートまで視野が広がっていく。
注意したいのは、3本のルートを持つこと自体が目的化してしまう場合だ。選択肢の数は増やしつつ、判断の速度は落とさないバランスが必要になる。コツは、3本の役割を最初から決めておくこと。平時は第1ルート、危険を感じたら第2ルート、それでもダメなら第3ルート、という優先順位を決めておくと、3本を同時に悩まずに済む。
チェック -- 直近の行き止まり体験を思い出す
次の問いに、記憶の中から答えを探してみよう。
- 最近、逃走中に袋小路に入ってしまった場面を一つ思い出せるだろうか
- その場面で、自分は何本のルートを頭に置いていたか振り返れるだろうか
- 今なら、そこで第2ルートとして使える分岐を思いつけるだろうか
- その分岐の先にあった視界線を、今なら予想できるだろうか
問いに全部答えられなくても問題はない。答えられる部分が増えていくだけで、ルート設計の精度は自然と上がっていく。
このSTEPのまとめ -- 選択肢の数は余裕の量
逃走ルートを3本持つという発想は、移動技術というよりも、頭の中の余裕を増やすための発想だと捉えた方が近い。1本しかない状態で追われると、選択肢がない分だけ焦りが強くなる。3本ある状態で追われると、どれを使うかという前向きな判断に変わる。この違いは、実際のルート選択そのものよりも、心の動きに大きく効いてくる。
今日の1試合では、移動を始める前に「もう1本、曲がれる場所はあるか」と自分に1回だけ問いかけてみよう。その問いを持てた瞬間から、マップは少しずつ、立ち止まらずに進める場所に変わっていくはずだ。
ゲームの「うまくなり方」を体系化するNEXTGG編集チーム。ジャンル別プレイヤーと共に、検証と実プレイを重ねた上達メソッドを届けている。