身体・年齢・反射神経の現実 -- 落ちる部分と、伸び続ける部分
「10代の頃と比べて、同じゲームのはずなのに手の反応が少し遅れている気がする」。20代の後半あたりから、長くスポーツゲームを続けているプレイヤーがふと感じる、この身体の変化の話に踏み込んでいきたい。ランクが思うように上がらない理由を、練習不足やメンタルに求めたくなる気持ちはわかる。けれど、実際には年齢による身体の変化という、自分の意志ではどうにもならない要素も確かに存在している。このSTEPは、その現実を直視しつつも、悲観するためじゃなく、新しい伸ばし方を見つけるために使いたい。
反射神経は、確かに落ちる
まず、否定しても仕方ない事実から置いておきたい。人間の反射神経(刺激を受けてから体が反応するまでの速さ)は、20代中盤をピークに、年齢とともに少しずつ遅くなっていくことがわかっている。スポーツ科学の研究では、視覚からの反応速度、選択反応時間、どちらも加齢の影響を受けるとされている。
スポーツゲームは、場面によってはこの反射神経が勝敗を分けるジャンルでもある。相手の裏を見てから一瞬で走り出す動き、ボールを受けてから次の判断までの0.2秒、こういう場面で20代前半の自分と30代後半の自分のあいだには、ミリ秒単位の差が実際に生まれている。この差を「気のせい」「練習不足」で片付けるのは、ちょっと無理がある。
その裏で、落ちない部分のほうが多い
ただし、ここで絶望する必要はまったくない。反射神経が落ちていく裏側で、年齢とともにむしろ伸びていく要素も存在している。たとえば状況判断、パターン認識、リスク管理、感情のコントロール、長期的な戦術の理解。こういった「考えて判断する」系の能力は、経験の量が増えるほど深まっていく性質を持っている。
面白いことに、プロのスポーツ選手の世界でも、競技によってピーク年齢は大きく違う。反射神経依存度の高い競技はピークが若く、判断力依存度の高い競技はピークが遅いというパターンが多い。スポーツゲームも同じ構造で、使える武器の中で反射神経依存の要素の比率が高い場面ほど若さが有利になり、判断依存の要素の比率が高い場面ほど経験値が有利になる、という図式が働いている。
戦略を「反射」から「判断」にシフトする
ここから見えてくるのは、年齢を重ねたプレイヤーが長期的に勝ち続けるためには、自分の強みの源泉を反射ではなく判断のほうにシフトしていく必要がある、ということだ。言い換えれば、反射で勝負する場面を減らして、判断で勝負する場面を増やす戦い方を身につけていく、という舵の切り方になる。
たとえば、1対1の読み合いで反射的な裏の取り合いになる展開を避けて、事前のポジション取りで自分の反射神経に頼らない展開に持ち込む。相手の選手の動きに反応するより、相手の戦術そのものの傾向を試合序盤で把握して、何が起こるかをあらかじめ予測しておく。こういうプレイスタイルは、経験値が増えるほど磨かれていく種類のもので、10代の反射頼りのプレイヤーにはむしろ真似しにくい領域だ。
体調管理が、上達に直結する時期が来る
もうひとつ、年齢を重ねてから強く実感するのが、体調とパフォーマンスの結びつきの深さだ。10代の頃は睡眠不足でも徹夜明けでも、ゲームの調子にそこまで影響しなかったかもしれない。けれど30代になってくると、前日の寝不足がそのまま翌日の判断速度に跳ね返ってくる体感が強くなる。
これはネガティブな話に聞こえるけれど、見方を変えると「体調管理そのものが練習の一部になる」という話でもある。睡眠、食事、運動、目の休め方。こういう要素を整える行動は、ゲームの中の練習と同じくらい、いやそれ以上に、長期のパフォーマンスに効いてくる時期が確実にやってくる。若い頃に雑に扱っていた体調という変数が、熟練プレイヤーにとっての新しい練習メニューになる、という感覚だ。
ピークを「過ぎる」のではなく「変わる」
「ゲームのピーク年齢を過ぎた」という言い方をよく見かけるけれど、個人的にはこの言葉にやや違和感がある。過ぎるというよりも、ピークの中身が変わる、と言ったほうが実態に近い。反射のピークは過ぎても、判断のピークはこれから来る。瞬発力のピークは過ぎても、持久力と体調管理のピークはまだ先にある。
自分のピークの定義を反射神経だけに縛っていると、20代後半で「もう終わり」と感じて離れてしまう。でもピークの定義を判断の深さや試合運びの上手さに置き直すと、むしろこれから面白くなる数十年が残っている、という見方もできる。どちらを選ぶかはプレイヤー次第だ。
長く続ける人は、戦い方を変えていく
最後に書き残しておきたいのは、長くスポーツゲームを続けているプレイヤーほど、戦い方を何度も変えているという観察だ。反射で勝っていた時期、技術で押していた時期、判断で捌くようになった時期、メンタルで崩されない時期。時期ごとに武器が変わっていて、そのたびに新しい自分を組み立て直している。
年齢による変化は、悲観するか受け入れるかの二択じゃない。むしろ、戦い方を何度でも再設計できる機会だと捉えると、長期キャリアの中で自分の伸ばし方の引き出しがどんどん増えていく。反射神経が少し落ちたぶんだけ、別の何かが伸ばせる余地ができた、というくらいの距離感で眺められたら、年齢という変数がゲーム人生の敵じゃなくなってくる。
ゲームの「うまくなり方」を体系化するNEXTGG編集チーム。ジャンル別プレイヤーと共に、検証と実プレイを重ねた上達メソッドを届けている。