時間投資と上達のリターンを計算する
「このコンテンツに1時間使うのと、別のことに1時間使うの、どっちが伸びるんだろう」ゲームに使える時間が限られてくるほど、多くの人が無意識のうちにこの計算を始めている。でも、計算そのものを言語化する機会は意外と少ない。なんとなくで選んでいるうちに、気づけば上達が止まっている時期が来てしまう。このSTEP4では、時間をゲームへの投資として捉え直し、上達のリターンを計算する型に踏み込んでいこう。現実の投資用語をゲームに持ち込む発想は、初めは冷たく感じるかもしれないが、それを一度通過すると、楽しい時間の密度がかなり変わってくる場合が多い。
ROI -- 投資対効果という補助線
ROI(Return on Investment。投入したものに対してどれだけ得られたかを示す指標)という言葉は、本来はビジネスで使われる概念だ。でも、時間という有限な資源をどう使うかという話には、そのまま応用が利く補助線になる。
ゲーム内の活動ごとに、投入する時間と得られるもの(リターン)を並べてみる。
- 周回型コンテンツ: 時間を入れた分、確率的に素材や装備が返ってくる
- ストーリー進行: 時間を入れた分、新しい景色や経験が返ってくる
- 練習型コンテンツ: 時間を入れた分、操作の精度が返ってくる
- コミュニティ活動: 時間を入れた分、関係性や情報が返ってくる
返ってくるものの種類が全く違うため、「どれが一番効率がいい」という単純な比較は成立しない。それぞれの活動が、自分にとってどの種類のリターンを生んでいるのか、を見分ける作業が出発点になる。
リターンの4種類 -- 何が得たいかを先に決める
ゲームから得られるものを4つに分類してみる。
- 資産 -- ゴールド・素材・装備などの蓄積物
- 上達 -- 操作・判断・知識といったスキルの向上
- 体験 -- 物語・景色・イベントといった一度きりの感動
- 関係 -- 人とのつながり・コミュニティ内の信頼
このうち、自分が今いちばん欲しいのはどれか、を先に決めておくと、活動選びのブレが減る。「全部欲しい」は正直な気持ちだが、時間が限られている中で全部を追うと、どれも中途半端になる場合が多い。どれかを優先して、他は余剰で拾う、という覚悟を持てると、プレイの手触りが変わる。
時間予算 -- 先に決めてから使う
お金の予算を決めてから使う発想と同じで、時間にも予算を組む発想が扱いやすい。
- 今週ゲームに使える時間は合計何時間か
- そのうち、メインの目標(上達/資産/体験/関係のどれか)に何時間回すか
- 残りの時間は何に使うか
予算を組むと、やらないことが決まる。やらないことが決まると、やることに集中できる。時間が減っているのに、逆にゲームが濃く感じる、という逆転現象が起きる場合がある。
限界効用逓減 -- 同じ活動の旨味は薄れていく
もう一つ、経済学の発想を持ち込むと便利なのが、限界効用逓減(げんかいこうようていげん。同じことを続けると、1単位あたりの満足度が少しずつ下がっていく現象)という考え方だ。
同じ周回コンテンツを1時間やると、最初の30分の手応えと、後半30分の手応えは違う。3時間続けたら、後半のほうは淡々とした作業感に変わっていることが多い。これは気のせいではなく、満足度の構造がそうなっているからだ。
この性質を知っていると、プレイ時間の分け方が変わる。同じ活動を何時間も続けるより、少しずつ違う活動を組み合わせたほうが、同じ合計時間でも満足度が高くなる場合が多い。周回1時間・育成30分・コミュニティ30分、というような切り替えのデザインが、長期で見ると効いてくる。
上達ROIの測り方 -- 感覚値を数字で測る難しさ
資産ROIは計算しやすい。得られた素材の個数や価格で測れるからだ。でも、上達ROIは測りにくい。操作の上達は数字に出ない種類のリターンだからだ。
一つの目安として使えるのが、「自分で上達を自覚できた瞬間を週に何回思い出せるか」という主観指標だ。
- 先週できなかった処理が、今週はできた
- 迷っていた判断が、迷わなくなった
- 反応が遅れていたギミックに、手が自然に動くようになった
こういう自覚の回数が、その週の上達ROIの代わりになる。回数が少ない週は、上達を目的にした活動の配分が足りていないサインかもしれない。
時間分散と時間集中のバランス
時間の使い方には、分散型と集中型の2つがある。
- 分散型 -- 短い時間を複数の活動に配る(毎日30分ずつ、いろんなことをする)
- 集中型 -- 長い時間を1つの活動に集中させる(週末にまとめて1つのことに4時間)
分散型は限界効用逓減を避けやすく、燃え尽きにくい。集中型は深さに届きやすく、コミュニティや難コンテンツに馴染みやすい。どちらが優れているかではなく、自分の生活リズムと、今欲しいリターンの種類によって使い分ける発想が合う。
投資の「休み」も計算に入れる
ここまで計算の話を続けてきたが、最後に一つ、忘れられがちなことを書いておきたい。プレイしない時間、つまり休みも、投資計画の一部として扱うほうがいい。
連日プレイし続けると、気力のリターンが徐々に細ってくる。同じ時間を使っても、得られるものの質が落ちていく。休みは、気力という見えないリソースを回復させる時間投資だと捉え直すと、休むことへの罪悪感が軽くなる場合が多い。「今週は休むことに時間を使う」という判断も、立派な時間配分の一つだ。
自己診断 -- 投資の設計ができているか
- リターンの種類 -- 資産/上達/体験/関係の4つのうち、今欲しいものを言えるか
- 時間予算 -- 今週の時間の使い道を先に決めているか
- 限界効用 -- 同じ活動を長く続けすぎていないか
- 上達の自覚 -- 週に何回の上達を自覚できているか
- 休みの計画 -- 休息も投資として扱えるか
最初の一歩 -- 今週の時間予算を3項目で組む
今日の一歩は、とても小さい。今週ゲームに使う予定の時間を、だいたいでいいから3項目に分けてみる。「周回◯時間、育成◯時間、コミュニティ◯時間」のようにざっくり配分するだけで十分だ。
作った予算は、守れなくても構わない。予算を組むこと自体が、時間との向き合い方を変えるきっかけになる。計算という言葉は冷たく響くかもしれない。でも、計算を通過した人ほど、その後の時間の使い方が柔らかくなる。自分だけの予算を組めるようになると、ゲームが仕事になるのではなく、むしろ自由が増える実感が戻ってくる。
ゲームの「うまくなり方」を体系化するNEXTGG編集チーム。ジャンル別プレイヤーと共に、検証と実プレイを重ねた上達メソッドを届けている。