HPを「生存ゲージ」ではなく「残り弾薬」として読む
「回復があるのに使えない、減ったら怖くて引いてしまう」中盤のランでHPが削られ始めたときに、手が固まってしまう感覚は、ジャンルをそれなりに触った人ほどよく知っているかもしれない。死にたくないから引く、引いたせいで押し場を逃す、逃した結果ジリ貧で崩れる。この連鎖をほどく入口は、HPの捉え方を少しだけずらすところにある。前回のSTEPで置いた「HP・資源・選択肢」のうち、今回はHPを一段深く見ていこう。
HPは生存ゲージではない -- 使うために積まれている資源
HP(Hit Point。キャラクターの体力値)は、表示上は生存を示すゲージに見える。減らされたら死ぬ、という事実があるから、ゼロに近づけたくない気持ちは自然に湧く。ただ、ローグライクの中盤で手が止まる人の多くは、このゲージを守るものとして扱いすぎている。
捉え直してみる。HPは残り弾薬だ。シューターで言えば、マガジンに入っている残弾数のようなもの。撃ち切ったら補給できないから慎重に撃つ必要はあるものの、撃たないまま敵に囲まれたら、そのまま押し切られる。残しているだけでは何も起きないリソース、という視点でもう一度眺めてみると、持っているHPは「使うために積まれている」という感触に切り替わってくる。
この切り替えは小さいが、実戦での手の動き方がかなり変わる場合が多い。HPを減らす選択肢を、自分に許してあげられるようになるからだ。
使っていいHPの目安 -- 3つの帯で考える
とはいえ、「減っても大丈夫」と口で言うだけでは、実戦で手は動かない。もう少し具体的な目印を置いていこう。残HPを3つの帯に分けて考える、という型が扱いやすい。
- 緑帯(およそ70%以上) -- 積極的にリスクを取っていい領域。雑魚の多い部屋に踏み込んでも、失ったぶんは次の部屋で取り返せる余裕が残っている
- 黄帯(およそ30〜70%) -- 取捨選択の領域。強化の機会は拾うが、明らかに損をしそうな戦闘は避ける方向にシフトしていく
- 赤帯(およそ30%未満) -- 1発で落ちる危険が見え始める領域。ここからは「押す」よりも「安全を買う」選択肢が優先になっていく
数字はあくまで目安で、ゲームによってダメージスケールは違う。大事なのは、今自分がどの帯にいるかを言葉にする癖をつけることのほう。ラン中に帯の名前が頭に浮かぶようになると、判断の揺れが減っていく。
回復アイテムの貯めすぎ問題
中盤でジリ貧になる人にありがちな崩れ方のひとつに、回復アイテムの抱え込みがある。もったいなくて使えず、温存しているうちに間に合わなくなって死ぬ、という流れだ。
回復アイテムは、未来の危機に備えるための保険に見えるけれど、保険としての価値は時間の経過で減っていく。ラン終盤まで持ち越せたら価値があるが、その前にHP切れで死んだら使わずに消える。この「価値の目減り」を意識すると、使いどきの決断が少しだけ早くなる。
目安としては、次の強敵や節目の戦闘の直前に、赤帯に入りそうなら使う、という型がひとつ。あるいは、資源が2個以上余っている状態で、1個を使って緑帯まで戻せるなら迷わず使う、という型もある。いずれも、温存の比重を少しだけ下げる方向の発想だ。
「回復のない部屋」を先読みして動く
もうひとつ、中盤で効いてくるのが、回復の地形把握だ。多くのローグライクでは、回復の出やすい部屋と、出にくい部屋が分かれている場合が多い。ショップ、節目、特定の報酬部屋などに回復が偏っている、という設計が一般的だ。
これを意識できると、押すべき場面と引くべき場面の地図が少し鮮明になる。次の回復機会までの距離が近いなら、今HPを使っても取り戻せる見込みがある。逆に、次の回復まで何部屋もあるなら、今のHPが当分の残弾になる、と考えた方がいい。距離感で押し引きを決める発想、という言い方でもいい。
地図の全部を覚えなくて大丈夫。「次の回復は近いのか、遠いのか」の二択だけで十分機能する。
小さな自己観察 -- 次のランで緑黄赤を声に出す
新しい視点を定着させるには、口に出すのが早い。次のランで、部屋に入るたびに「今、緑」「黄に入った」「赤、気をつける」と、帯の名前を頭の中で唱えてみよう。声に出すのが気恥ずかしければ、心の中で十分だ。
3ランか4ラン続けると、唱えなくても自分が今どの帯にいるかがパッと掴めるようになってくる場合が多い。その段階まで来ると、HPを使うか温存するかの判断が、以前より少しだけ軽くなっているはずだ。
このSTEPのまとめ -- HPは使うために積まれている
- 残り弾薬の比喩 -- HPを守るものから使うものへ、捉え直せたか
- 3つの帯 -- 緑・黄・赤の目安を自分の中に置けたか
- 回復の目減り -- 温存の比重を少しだけ下げる発想を持てたか
- 地形の回復分布 -- 次の回復までの距離で押し引きを見る発想を持てたか
- 帯の声出し -- 次のランで試すイメージが湧いたか
HPは、減らさないための数字ではなく、減らすことで次の展開を作るための数字、という見方にほどけてくると、中盤の手の止まり方がかなり変わってくる。焦らず、一度に全部を実践しなくていい。次のランで帯を唱える、そこから始めてみよう。
ゲームの「うまくなり方」を体系化するNEXTGG編集チーム。ジャンル別プレイヤーと共に、検証と実プレイを重ねた上達メソッドを届けている。