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スタート前の「自分の儀式」を持つ -- 走る前の1分で、走りの7割が決まる

スタート前の「自分の儀式」を持つ -- 走る前の1分で、走りの7割が決まる

レースが始まる前の1分間を、どんな過ごし方をしているだろう。何気なく画面を見ながら、「そろそろ始まるなあ」と思って待っているだけの人も少なくないはずだ。けれどその1分の使い方で、実際のレース中の集中力はびっくりするくらい変わってくる。プロドライバーや配信で見かける上位プレイヤーたちが、スタート前にそれぞれ固有のルーティン(繰り返し行う決まった行動)を持っている理由が、このあたりにある。STEP1では「自分の儀式を1つ持つ」ことの意味と、最初の一歩の置き方を一緒に考えていきたい。

儀式は「上手くなるため」じゃなく「自分を戻すため」

ルーティンや儀式、と聞くと、何か特別なテクニックを実行するためのもの、というイメージを持つかもしれない。実際には逆だ。儀式の役割は、レースに特別なことを加えるためではなく、いつも通りの自分に戻すためにある。

レースの直前は、人は緊張したり、焦ったり、期待したりして、心拍や呼吸や手の動きが「普段」からズレている。このズレを抱えたままスタートを迎えると、1周目から操作が微妙にぎこちなくなる。儀式は、そのズレを修正して「普段の自分」の状態に戻すための道具なんだ。

特別なことをやる必要はない。毎回同じ行動を、同じ順番で、同じテンポで繰り返すこと。それさえ守られていれば、儀式は儀式として機能する。

儀式の例 -- 地味な動作ほど効く

儀式の中身は人によって違うし、派手である必要もない。以下は、多くの上位プレイヤーが実際にやっていると思われる行動の例だ。

  • 椅子に座り直して、背筋をまっすぐにする
  • 両手をハンドルにかけて、グリップを3秒間軽く握り直す
  • ペダルを1〜2回踏み込んで感覚を確かめる
  • 深呼吸を3回、ゆっくりと
  • 画面のどこか1点を3秒間じっと見る
  • マシン設定や周回数を最後にもう一度目で確認する

この中から2〜3個を選んで、自分の順番で組み合わせてみる。大事なのは、毎回同じ組み合わせを、同じ順番でやることだ。最初は不自然に感じても、5〜10回続けているうちに、身体のほうが「ああ、次はこれだな」と覚えてくれる。身体が覚えてくれると、スタート前の儀式を始めた瞬間に、心のほうも「走る状態」に切り替わっていく。

儀式は、失敗後の自分にも使える

面白いのは、スタート前だけじゃなく、レース中の立て直しでも儀式が効くところだ。大きなミスをした直後、ピットに入る直前、長いストレートで呼吸が浅くなってきたとき。そういう場面で、スタート前にやった儀式の一部を再実行する。グリップを3秒握り直す、深呼吸を3回する。それだけで、ズレかけた状態を「普段」に戻す糸口になる。

これはつまり、儀式が「集中状態に入るためのスイッチ」として身体にインストールされるということだ。スイッチを押せば、身体は過去に儀式と結びつけた集中状態を呼び戻してくれる。何度も繰り返すほど、スイッチの効きは鋭くなっていく。

このSTEPでやってほしいことは、本当に1つだけ。次のセッションを始める前に、自分なりの3ステップの儀式を作って、試してみる。気恥ずかしいくらい地味でいい。地味な動作ほど、繰り返しに耐えて長く残る。自分だけの小さなスイッチを、手元に1つ持つところから始めてみてほしい。

儀式を「重くしない」ことの大事さ

儀式を作るとき、つい欲張って長いルーティンにしてしまう人がいる。深呼吸を5回、ストレッチを3種類、目を閉じて集中を整えて、最後に気合の一言……みたいな豪華版だ。最初は楽しいかもしれないけれど、2週間もすると、その豪華版を毎回実行するのが億劫になってくる。結果として儀式そのものをやらなくなり、スイッチを失う。

儀式は、毎回実行できる軽さが命だ。10秒で終わる3ステップくらいが、続けやすさのピークだと思う。豪華な儀式より、地味だけど必ず実行する儀式のほうが、長い目で見たときに強い。儀式は見せ物じゃなく、自分を戻すための道具なので、道具らしく質素でいい。

儀式は時間と共に育つ

もう1つ、儀式について覚えておきたいこと。最初に決めた儀式が、数ヶ月すると自分にフィットしなくなってくることがある。そのときは、無理に固執せず、儀式の中身を少しずつ入れ替えていい。大事なのは「毎回同じことをやる」という構造のほうで、具体的な動作の中身は更新されていい。

自分の集中のくせや、緊張の出方は時間と共に変わっていく。1年前の自分と今の自分では、必要なスイッチも違う。儀式は固定の呪文じゃなくて、自分の状態と対話しながら育っていく生き物みたいなものだ、と思っておくと、長く付き合える相棒になってくれる。

儀式は「失敗しても続ける」が鉄則

儀式を持ち始めたあとによく起きる落とし穴がある。儀式をやったのに結果が悪かったとき、「儀式に意味がないのかも」と感じて、やめたくなる衝動だ。けれどここで一度やめてしまうと、スイッチの効きが全部リセットされてしまう。

儀式は、結果が悪い日でも続けることに意味がある。悪い日ほど、儀式を通じて「普段」に戻る動作そのものが、自分を立て直す手がかりになる。結果と儀式を切り離して、儀式はレース前の独立したルーティンとして毎回実行する。この姿勢を半年続けていると、儀式と自分の集中が本当に深く結びつく瞬間がやってくる。

執筆・編集NEXTGG編集部

ゲームの「うまくなり方」を体系化するNEXTGG編集チーム。ジャンル別プレイヤーと共に、検証と実プレイを重ねた上達メソッドを届けている。

公開 2026-04-12読了 約4

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